数年ぶりに再会した二人の続き。


ひとまず、コンクールで2位になった後の話です。


一応、言っておきますが、ベタで、しょうもない展開です(笑)




☆☆☆

小島家

薫は、キッチンに行き、支度を始める。
どうしていいかわからず、リビングに突っ立ている楓に


「楓、ひとまず着替えてきなさい。」
「あっうん」


楓は、そそくさと自分の部屋に入って行った。


「やっぱりちょっと照れくさいのかしらね」

「そりゃそうでしょう?
久しぶりにヒカル君に会ったんだから」


ヒカルも申し訳なさそうに

「すいません、いろいろお手間かけさせちゃって・・・」

「いいのよ、私たちも久し振りに
ヒカル君に会えて、嬉しかったんだから」

「そうだよ、僕たちに遠慮は無用だよ」

「ありがとうございます」

「まっいろいろ聞きたい事はあるけど・・・ひとまずは・・・
楓、遅いわね・・・ヒカル君、ちょっと見に行ってもらえる?」

「え?あっはい・・・」

「ゆっくりでいいから、ね」


薫はヒカルにウィンクしながら言った。
ヒカルは、照れくさそうな顔で
楓の部屋に向かった。



コンコン


「楓ちゃん?着替え終わった?」

「え?あっうん」

「入っていい?」

「うっうん」

「おじゃまします」


ヒカルは、ゆっくり扉を開け中に入り、扉を閉めた。
ちょっと気まずい空気が流れる。
楓はたまらず

「ひーちゃん、座って」

「いいの?じゃぁ・・・遠慮なく」


ヒカルは、机の前にある椅子に座る。
楓は、ベッドに腰掛ける。
ヒカルは、優しい笑顔で


「ごめんね、急に来ちゃって」

「ううん、ちょっとビックリしたけど・・・
でも・・・どうして?」

「・・・父さんの仕事関係でね・・・代理で来たんだ・・」

「あぁそうなんだ・・・」

楓は、少しがっかりしたように顔を伏せる。
そんな楓を見て、ヒカルは

「・・・・っていうのは・・・実は口実」

「え?」

楓は、顔を上げる。
ヒカルは優しい笑顔で

「実は、前から、楓ちゃんに話したい事があって・・・」

「話したい事?」

「うん・・・でも、それは電話では
ちょっと話せる事じゃないと思って・・・」


楓は不思議そうな顔でヒカルを見ている。

ヒカルは、すっと立ち上がり楓の横に座った。
楓は、ビックリして
ちょっと上半身が引けてしまう。
ヒカルは、楓の手を取り、楓の目をジッと見つめる。

楓は、驚きと戸惑いで、どうしていいかわからず
顔を真っ赤にして、目を反らした。

「楓ちゃん・・・・」

ヒカルのその言葉に
もう一度、おそるおそるヒカルの目を見つめる。

「・・・前に、電話で、ボクは自分に
正直になるって言ったの覚えてる?」

楓はコクリと頷く。

「・・・・・ボクは君の事が、好きだ・・・」

「え?!]

楓は、ヒカルの突然の告白にビックリする。

「・・・でも・・・今更だけど・・・
ボクは君より、かなり年上だし・・・
・・・今は日本にいないから、ずっと君の傍にいる事が出来ない・・・
だから・・・本当は、この気持ち・・・
ずっと言わずにいようと思ってたんだ・・・
・・・でも・・・やっぱり無理だった・・・」

「ひーちゃん・・・・」


楓の目が潤んでくる。


「こんなボクでも、楓ちゃん・・・
キミは受け入れてくれるだろうか・・・」


しばらく楓は、ヒカルの目を見つめながら何も言えなかった。

そして、目を伏せ


「・・・・ばか」

「へっ?」

見ると楓は、目に一杯涙を溜めている。

「・・・こんなもあんなも・・・ひーちゃんはひーちゃんでしょ?
私は・・・ずっとあの頃から、いろんなひーちゃんを見て来た・・・
かっこいい姿も、そうでない姿も・・・・
あたしもいろんな姿を見せて来た・・・・
それは・・・ひーちゃんだからなんだよ・・・」


「楓ちゃん・・・」

楓は、勇気を出して、ヒカルに抱きついた。

「私も、ひーちゃんが大好き!ずっと前から・・・好き!
ひーちゃんじゃなきゃ、ダメみたい・・・」


ヒカルは驚いたが、優しく楓を受け止めた。

「ありがとう・・・」


ヒカルに抱きついたまま、首を振る楓。
しばらく、抱き合ったままの二人。

「楓ちゃん・・・」


楓は、ふと顔を上げる。
ヒカルは、楓の目を見つめ


「キスしていい?」


楓は、ポッと顔を赤らめたが、コクリと頷き、目を閉じ
二人は軽く唇を重ねた。

唇が離れると楓は

「夢じゃないよね・・・」

「ん?」

「だって・・・」


そこへ


コンコン


「あっはい」


扉の外から薫が


「お取込み中、非常に申し訳ないんだけど・・・
そろそろ食事にしませんか?」

「あっそうだ、楓ちゃん、呼んで来てッて
頼まれてたんだった・・・」


二人は顔を見合わせて、笑いながら
楓の部屋を出た。


「あら?なんか楽しそうね」


楓は、笑顔で


「ベっつに、ね」


ヒカルも、笑顔で頷く。





食事をしながら、ヒカルの今の仕事の事や
パリでの生活や家族の事など話した。

そして、食事も終わり、お茶を飲みながら一息ついてると
ヒカルが、徐に姿勢を正し


「正太郎さん、薫さん」

「何?急に改まって?」

「今まで、いろいろご迷惑やご心配をおかけしてきまして
本当に申し訳ありませんでした」


二人は、ビックリするも、黙ってヒカルの話に耳を傾ける。


「・・・で、今更何ですが・・・・」


二人は、察したのか顔を見合わせて、ニヤニヤし始める。

そんな二人の顔を見て
ちょっと恥ずかしくなるヒカルだったが


「この度、楓ちゃ、いや楓さんと
交際させていただくことになりました」

「へ?交際?結婚じゃなくて?」


薫が、突拍子もない事を云う。
ヒカルは、ビックリして言葉が出なかった。

楓も顔を赤くして

「結婚?ちょっ、ちょっと薫ちゃん、何言って・・・」

「なあんて、冗談よ、もうじれったかったから
ちょっとからかってみただけ」

「もう薫ちゃん!」

「・・・いや、ボクは、それでもいいんですけど・・・」

ヒカルは、真面目な顔をして言う。

「え?」

今度は、薫たちがビックリした。

ハッとして、ヒカルは慌てて


「いえ、今すぐとかじゃなくて・・・将来的な話で・・・」

「ひーちゃん・・・」


楓は、ビックリした顔でヒカルを見つめる。


「要は、結婚を前提に
お付き合いを始めるって事でいいんだね?」


正太郎が、ドヤ顔で言う。


「何、正ちゃんが、ドヤッてるの?」

「だって、そういう事でしょ?」

「そうだろうけど・・・」

「僕は、大賛成だよ!
だって、何処の馬の骨かわからないやつに
楓ちゃんを嫁にやるくらいなら
もう今からヒカル君に、予約してもらってる方が、安心だもの」

「予約って・・・ホテルとかじゃないし・・・」

「でも、実際、薫さんもそうだろう?
親代わりとしては・・・」

「そうだけど・・・」

「楓ちゃん、ぼくはね、今までもこれからも
ずっと楓ちゃんのお父さん替わりのつもりだよ・・・
だから、楓ちゃんに対して、責任があるんだ・・・
天国のお父さんとお母さんに安心してもらえるように
いつも見守ってる・・・そして何かあれば、
頼ってくれると、嬉しいな・・・」

「おじさん・・・」


薫は半泣き半笑いで


「ちょっと、正ちゃん、なんだか本当に
お嫁に行く前の日の父と娘状態になってるわよ」


正太郎も、目に涙を浮かべながら


「なんか僕も、そんな気がしてきた」

「正太郎さん、気が早いですって・・・あははは」


4人は、それぞれの想い胸に笑いあった。

その後、ヒカルが日本にいる間にやらなければならない事や
楓との今後の話をしながら、世は更けて行った。


そして、瞬く間に、ヒカルがパリに戻る日がやって来た・・・。











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