今度は、急に思いついたので
かなり先の話ですが。。。。

番外編として。






☆☆☆


「ヒカル君、起きなさい、遅刻しちゃいますよ」

ヒカルは、遠くから聞こえる声に、目を空けないまま
寝返りを打ちながら

「ん・・・楓・・・今日・・・休み・・・」

「ん?楓?何言ってるんですか?誰ですか?のだめは
ヒカル君の彼女じゃないですよ」

ペシッとおでこを叩かれ

「イテッ」

「ん?母さん?・・・」

「今日から、学校でしょ?
早く起きなきゃ、遅刻しちゃいますよ」

「・・・・学校?」

ヒカルは、なにがなんだかわからず
ひとまず起きてみた。

目の前には、若き姿ののだめがいた。

「???母さん?・・・何で、そんなに若いの?」

「はい?何言ってるんですか?朝から、お世辞言っても
何も出ませんよ?へんなヒカル君です」

のだめは、不思議な顔して、部屋から出て行く。
ヒカルは、目をこすり部屋の中を見渡すと
そこは、パリの自宅の自分の部屋だった。

「え?」

びっくりして、慌てて部屋の中を改めて見渡す。

「ボクの部屋?え?
だって・・・ボク今、日本にいるんじゃ?」

困惑していると

「あぁまだお兄ちゃん寝てる
早くしないと、お兄ちゃんの分まで食べちゃうから」

「え?」


よく見ると、妹の美音まで、小学生位の姿だった


「美音???なんで、そんなに小さいの?」

「!!お兄ちゃん、ひどい!!レディに向かって!!
お兄ちゃんのバカッ!!」

「おいおい、何朝から兄妹ゲンカしてるんだ?」


今度は、真一が顔を出す。

やはり、だいぶ若い。


「・・・父さんまで???え?」


ヒカルは、ベッドから、恐る恐る出て
壁にかかってる鏡をのぞき込む。

そこには、10代の頃の自分の姿が・・・

ヒカルは、慌てて自分の顔を触る。
そして、自分の左手を見つめる・・・
そして、静かに握り締めた・・・・


「指が曲がる?!」


ハッとして、同じく壁にかかってるカレンダーを確認する。


~20〇〇年 9月~

「〇〇年って言ったら・・・怪我した年??しかも、9月・・・?
でも?何で?実家にいるんだ?」


ひとまず、急いで着替えて、部屋から出てみる。


「あ?ようやく、起きましたね?
アパルトマンに戻る準備は出来てるんですか?
学校行く前に
寄ってから行くって言ってたでしょ?」

ヒカルは、のだめの言葉に
なんとなく昔を思い出していた。

(そうだ、夏休みの間、日本に行ったりしてて
その後、実家に帰って来てんだった)

「あっ、うん、あらかた出来てる」

ヒカルは適当に答えた。

「じゃぁ朝食終ったら、荷物玄関に出しときなさい
オレも一緒に出て、送ってから仕事に行くから」

「え?あっわかった」

ヒカルは自分の席に座り、朝食をとり始めた。

(やっぱり夢だよな?これ?にしても、随分リアルだな?)


「お兄ちゃん?何ぼっとしてるの?」

「え?あっいや」


ヒカルは、急いで食べた。

この後、真一にアパルトマンまで送ってもらい
荷物を置き、その足で学校まで送ってもらった。

学校でも、懐かしい風雅に聖良、舞の姿もあった。

ヒカルは、ひとまず「夢でもいいっか」と開き直り
懐かしい学校生活を楽しんだ。

そして、あっという間に、ヨーロッパ国際コンクール。
ヒカルは優勝する。

(これで・・・学校辞めて、プロになるって決心するのか・・・
そして・・・あのノエルの悲劇に繋がる・・・
でも・・・まてよ、ここで、学校辞めずに、卒業する道を
選んだら、未来は変わるんだろうか???)

「ヒカル、ヒカル」

ヒカルは、はっと我に返る。

「ヒカル、何ボーっとしてるんだ?」

「あっ父さん」

気が付くと、自宅のリビングにいた。
目の前には、真一とのだめがいる。

「あっじゃない、で、結局どうするんだ?」

ヒカルは、(よし、どうせ夢なら)決心したように

「・・・・決めた、ここで慌てて学校辞めるより
ちゃんと作曲科で学んで、きちっと卒業してからでも
遅くないと思うんだ」

「そっか・・・お前が、決めたことなら
俺たちは、応援するだけだ」

「うん、ありがとう、二人とも・・・」






「え?ヒカル、プロなるのやめちゃうの?」

「別に辞めるわけじゃないけど・・・
今すぐじゃなくていいのかなって」

「へ~何か、意外。」

「そう?」

「うん、だっててっきり、さっさとプロになるんだと思ってた。
早く一人前になりたいのかな~って勝手に思ってた」

「たしかに、早く一人前にはなりたいけど・・・
せっかく作曲家に移ったばかりだし
今辞めても結局中途半端に
なるから、ここで焦らず、
じっくり学ぶのもありかなって将来的にもね」

「まぁたしかにそうだよな、いずれプロになるにしても
無駄にはならないだろうし・・」

「うん・・・実はいずれ
自分の曲で、指揮もしてみたいなって・・」

「え?」

3人は、今まで一番驚いている。

「ちょっとヒカル、熱でもあるの?」

「何だよ、急に」

「だって、ヒカルが指揮って・・・どういう心境の変化?」

「ボクが指揮するって、そんなに変?」

「変だよ、だってあれほど
お父さんと比べられるの嫌がってたのに」

「そうだけど・・・・」

「まぁそれだけ、ヒカルも大人になったって事じゃないの?
別に悪い事じゃないじゃないし
ねぇもし、そういう機会があったら
わたしとコンチェルトやってよ」

「あっ舞、ずるい!わたしもわたしも」

「ちょっちょっと、なんでヒカルの時だけ?
オレだって、指揮科に移って
指揮者になろうとしてるのに・・・」

「風雅には意外性がないというか・・・ねぇ」

舞は聖良に話を振る。

「うん・・・風雅は、絶対指揮者になると思ってたもの」

「え?そうなの?」

「うん、私が言うのもなんだけど
このままヴァイオリンやってても
ヒカルには勝てないし、だったら指揮者ならって感じで」

「・・・ちょっと聖良酷くない?」

「だって、そうでしょう?」

「そうだけど・・・」

「ほらやっぱし」

「ヒカル~何とか言ってよ~」


ヒカルは首を横に振り、お手上げジェスチャー


「そんな~」


皆、大笑い。

ヒカルは、心の中で
このまま平和な日々が
続けばいいのにと思っていた・・・。

そして、ヒカルは意を決して

「そうだ、ノエルの前日、学校終わったら
うちで、パーティーしない?」

「パーティー?」

「うん、ボクが何か作るよ、たいしたもの作れないけど」

「おっいいね~ヒカルの作る料理、絶品なんだよな~」

「たしかに、じゃぁあたし、材料奮発しちゃおうかな~」

「私も私も!一緒に買い物行こう!」

「ついでにプレゼント買おうかな?」

「だめ!」

ヒカルは、つい声を荒げてしまった。

「え?」

3人は、ビックリして、ヒカルの顔を見る。

「あっごめん、でもプレゼントはいいから
そんなに気は使わなくて、大丈夫だから」

「そう?まっいっか」

3人は、目の前に迫っているノエルにむけて
はしゃいでいた。


(これでどうかわるかわかんないけど
ひとまず、いいよな・・・)


当日

前日に食材の買い物を済ませていた3人は

「ヒカルは?」

「先に帰って、料理の仕上げするって」

「相変わらず凝るね、さすが完ぺき主義」

「ね、やっぱりせっかくだから、プレゼント買おうよ」

「そうよね?ヒカルは、ああいったけど
やっぱりクリスマスにプレゼントないのって
寂しいよね?」

「ウンウン」

「じゃぁさ、帰り道にある
あのお店にちょっと寄って行こうよ
可愛いの見つけたんだ」

「え~ヒカルに怒られるよ」

「大丈夫よ、どうせ風雅は
店に入りたくないだけでしょ?」

「だって・・・あんな女の子ばっかのお店・・・」

「じゃぁ店の外で待っててよ」

「・・・・わかった、早く戻って来てよ」

「はいはい」

舞と聖良は、店の中に入り、風雅は入り口近くの
邪魔にならないところで待つことにした。

しばらくした頃

「遅いな~もう二人とも・・・」

そんなの事を、思っていた風雅の目に
見覚えのある男の姿が。


「あれ?今のって????」


風雅は、気になり、その男を目で追っていた。

ちょうどそこに舞と聖良が店の中から出てくる。
その瞬間、男が刃物らしきものを
ポケットから出したのと同時に
風雅は思い出した


「あいつ、舞のストーカーだ!」


それと同時に、舞と聖良に向かって


「舞、聖良、逃げろ!」


といいながら、風雅はその男めがけて飛び掛かった・・・

その瞬間、血が飛び散った。


「きゃ~~~~~~~~~~~」
「わっ~~~~誰か、襲われたぞ」
「警察!救急車!」
「風雅?風雅!」

視界が真っ赤になって、
泣きながら、すがる舞と聖良の姿を見ながら

「ふたり・・・とも・・大丈夫・・・」


声にならない声で、呟き
風雅の目は静かに閉じられた・・・。

「いやーーーーーーーーー」





Truuuuu

ヒカルは、キッチンで料理の仕上げをしていた。

そこへ、舞からの着信。

「もしもし?舞何やってるの?もうすぐ出来るけど・・・
え?風雅が?わかった・・・・」

ヒカルは、電話を切った後

(何で?何で?未来は変わったんじゃ?いや
たしかに、ボクは無傷だ・・・そのかわりに??)

ヒカルは、エプロンをはぎ取り、慌てて部屋を飛び出す。






病院に着いて
病院のスタッフに案内されたヒカル。

そこには、お互い支えあい、泣きながら
座っている舞と聖良。

風雅の両親のジャンとゆうこがいた。

「ヒカル」

ジャンがヒカルに気が付き

「ジャン、風雅は?」

「まだ・・・手術中なんだ・・・」


ヒカルは、舞と聖良の所に行き
怒りを抑えながら、深呼吸して

「何があったの?何で?あの店に行ったの?」

聖良と舞は泣きながら

「・・・ヒカルは、いいって言ったのに
私たちが、やっぱりプレゼント買おうって・・・」

「風雅は、恥ずかしいからって・・
店の外で待ってて・・」

「くっ・・・・」


ヒカルは、唇をかみしめ、拳を握り締める。


そこへ


「すいません・・・」


見ると、警察の人間が立っていた。


「まだ風雅君の手術は?」


ジャンが首を振る。


「そうですか・・・事情聴取をしたいのですが・・・
加害者も拘束しているし
また後日という事で・・・
で、こんな時に何なんですが・・・加害者が
どうしても、お詫びをしたいという事で・・・」

「え?」

ヒカルが、その加害者の方を見ると
かつて(現実世界で)ヒカルに怪我を負わせた、あの男の姿が。
ヒカルはたまらず、男の傍に近づき


「お前、僕だけじゃ飽き足らず、風雅までも」


胸ぐらに手を伸ばしかけたその時


「やめなさい、僕だけじゃって
君も何かされたのか?」

「知らない、オレはこいつにはなんにもしてない
それに今日だって、別に、傷付けるつもりなんて・・・
あいつが急に飛び出してくるから」


男は、膝から崩れ落ちる。

そこへ

手術室から、医者が出てくる。


「風雅は?」


医者は、目を伏せ首を振り

「残念ですが・・・あまりにも出血が多すぎて・・・
間に合いませんでした」

医者は、深々と頭を下げ、去っていった。

「いや~」

ゆう子は、ジャンにしがみつき悲痛の叫びをあげ、崩れ落ちる。
舞と聖良も、声を出して泣いている。


ヒカルは、そんな皆の姿を見ながら
呆然とする。


(これが、ボクの望んだ未来?ボクの代わりに風雅が?
しかも、死んだって?!!そんなの望んじゃいない!!
ただボクは、ボクは・・・・うわ~~~~~~)







「うわ~~~~~」


ヒカルは、飛び起きる。


「ヒカル君?大丈夫?」


隣には、心配そうに見つめる楓の姿。


「楓・・・?」


汗びっしょりで肩で息をしながら、辺りを見渡すヒカル。
そこは、昨夜から泊っているホテルの寝室。


「やっぱり・・・夢???」


ヒカルは、自分の左手を見つめ、
そっと指を閉じてみる。
途中まで閉じる薬指と、全く曲がらない小指・・・。


「くっあははははは」


頭を押さえながら、笑い声と涙が一緒に出てくる。


「ヒカル君?」


ヒカルは、心配そうに見つめる楓を
思いっきり抱きしめる。


「くっ、ヒカル君、苦しいよ」

「よかった・・・夢で・・・よかった・・・」

ヒカルは、しばらく楓を
抱きしめたまま動かなかった。






「はぁ?オレが死んだ?お前が怪我する代わりに?」

「あぁ」


ヒカルの目の前には、かつての級友たちがいる。


「何だそれ?」

「それって、今のヒカルのまま
夢の中でタイムスリップしたって感じ?」

「まぁぶっちゃっけ、簡単に言えばね。
ボク以外は、皆あの頃のままだったし、ボク自身も見た目は
あの頃のボクに戻ってた・・・でも、中身は今の自分で
だから、もしあの時、選んだ道と違う道を選んだら
どうなるんだろうかっていう好奇心と
どうせ夢なんだからって・・・」

「プロになるのを延期して
学校に残る道を選んだと・・・」

「うん」

「で、あの日も、私たちが
あの店に行かない様に、注意した・・・・」

「うん・・・」

「でも、私たちは、ヒカルに内緒で、行っちゃったわけか」

「うん・・・」

「で、案の定、あいつがいて、襲って来たと・・・」


傍で聞いていた楓は、ぞっとして身震いをした。


「あっ楓さん、ごめんね、怖い話して」

「いえ、大丈夫です。あらかた聞いてますから」

「ダメじゃない、結婚前の花嫁に、そんな怖い話しちゃ」

「だって・・・その夢見てる時
叫び声上げたらしいんだ・・・」

「叫び声?」

「うん・・・風雅が死んだって聞かされて・・・・
それで、ボクはこんな未来望んじゃいないんだ~~~って
叫んだら、現実でも叫んでたらしい・・・・」

「やだ~びっくりしたでしょう?」

「はい・・・どうしちゃったんだろうって・・・」

「だから・・・話さないわけには・・・」

「そっか、それじゃしょうがないか。
でも、ってことは、やっぱりヒカルの選択は
間違ってはいなかったって事なんじゃない?」

「そうだね、ボクの怪我だけで済んでるんだから・・・
もし夢の通りの選択して、風雅が死んでいたら
ボクはもっと後悔をしていたと思う・・・」

「ヒカル・・・やっぱり、お前は俺の心の友だ」

風雅は、べそかきながらヒカルに抱きつた。

「やっ風雅、やめろ」

ヒカルは、無理やり風雅を引き離す。

「でも、今までも、そんな夢見たことあったの?」

「ううん、初めて。
最初の内は、現実のシーンは、何度か見たけど
こんな未来が代わったら?なんてのは、初めて」


「何で、今頃そんな夢見たのかしら?」

「そうよね、あれから10年以上もたってるのに・・・」

皆黙ってしまう。


「・・・皆さんにお会いしたからじゃないですか?」

楓が、ふと口を開いた。

「え?」

皆が楓の方を見る。

「いやっ、実は最近まで、ヒカル君が怪我した時の
詳しい話って、聞いた事がなかったんです。
中学生の頃、一度聞いた事はあったんですけど
自分だけの問題じゃないからって・・・
教えてもらえませんでした」

「あら?そうなの?・・・
まぁたしかに・・・元の原因は私にあるものね・・・」

舞が言う。

「私にだって・・・あの時、隠れてろっていわれたのに・・・」

聖良も、続く。

「それならオレにだって・・・ヒカルは、オレを庇って・・・」

風雅は、項垂れる・・・そんな皆を見て

「だから、話さなかったんだ・・・実際怪我したのはボクだけど
皆それぞれ心に大きな傷を負っていた
だから・・・これはボク一人の問題じゃないんだと
ずっと思っていた・・・だから
安易に他の人には話せなかった・・・。」

楓は、顔を真っ赤にして

「でも、プロ・・・プロポーズしてくれた時に
ボクのすべてを知ってほしいって・・・
話してくれました・・・」

「楓っ」

「ヒュ~相変わらず、やる事イケメンだね~」


舞と聖良は、声を殺して笑ってる。


「風雅からかうな」


ヒカルも顔を真っ赤にしている。


「で、今回、皆さんが久しぶりに会うって事になって・・・
それで、見た夢なんじゃないんでしょうか・・・」

「ふ~ん、という事は、いまだにずっと、引きずってたって事?」

「そう言う訳じゃ・・・でも、そうなのかも・・・
多分、長い年月の間、心の奥底に眠らせてた気持ちが
皆に会えるって事で、顔出してしまったのかも・・・」

「でも、きっと神様が、あの時のヒカル君の
選択は間違っていなかったんだよって
見せてくれた夢だったんじゃないかと思います」

恥ずかしそうに楓は言った。

舞は、そんな楓を見て

「もうなんていい子なの~~~すごい癒されそう
私の傍に置きたい位だわ」

ハグしようとするも、ヒカルに遮られ

「舞だめ、楓は、ボクのだから」

楓を自分の方に抱き寄せる。

3人は、目を見合わせ笑い出す。

「何?」

ヒカルは、不貞腐れる。

「だって~楓ちゃんのおかげかしら?
なんか、ヒカルが素直でかわいい」

「はぁ?」

「だよね~なんか、こんな素直で
かわいいヒカル見たことない」

「本当本当、本当に良い人に巡り合えたのね
よかったねヒカル」


ヒカルは照れながらも


「・・・うん」

「楓ちゃん、ヒカルの事ヨロシクネ
こんな歳の離れたおじさんだけど
中身は、楓ちゃんに
メロメロのかわいい子供みたいなもんだから」

「舞、おじさんは余計だ」

「そう?ああははは」

5人は、いつまでも笑いあった。






そして、翌日

白い教会で、ヒカルと楓は、永遠の愛を誓い合った。

大好きな家族と友人たちに囲まれて・・・。



「Pride」 ByX4

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。