真一のマネージャーを務める事になったヒカル。
☆☆☆


ヒカルが、真一のマネージャーになってから

数日後、美音が日本から帰国。


「お兄ちゃん、パパの弟子になったって?」

「弟子じゃない、マネージャーだ」

「そんなのどっちでも一緒よ、はいじゃぁこれ」

美音は、分厚い手帳を、ヒカルに渡した。

「何これ?」

「パパに関するデータ。
指揮者仲間から、今まで振ったすべてのオケ
共演したソリストなどなどのデータに、今後のスケジュール
一応、5年先まで、決まってるのもあるから。」

「5年先?」

「そりゃそうよ、パパを誰だと思ってるの?
伝説のマエストロ、クリスチャーノ・ビエラと
フランツ・フォン・シュトレーゼマンを師匠に持ち、
自身も絶え間ない努力の末、今の地位に上り詰めた
若きマエストロ、シンイチ・チアキよ!!」

「うっうん・・・」

あまりの美音の力説に、頷くしかなかったヒカル。
そこへ

「美音、やめなさい、何度言ったらわかるんだ
オレは、まだマエストロなんて言われるような立場じゃない」

「もうパパはそうやって、いつも自分に厳しくして
もっと肩の力抜いて、そうだミルヒーを見習ったら?」

「あのエロジジィの何を見習えと?
それに、今の時代、いくら偉大なマエストロと言っても
セクハラやパワハラで訴えられる時代なんだぞ
本当に、今生きていなくてよかったよ、あの人も・・・・」

真一は、少し遠い眼をするも

「ともかくまだまだオレは、いろんな人からいろいろ
学ばなきゃいけない事が沢山ある・・・
そんなオレがマエストロを名乗るなんて・・・
おこがましくて・・・」

真一は、そういって首を横に振った。

「父さん・・・・そっか・・・父さんの歳でも
まだまだ学べることが、沢山あるんだね・・・・
そっか・・・じゃぁボクなんて、まだまだ学ぶことだらけだ
うん・・・なんかワクワクして来た!」

「お兄ちゃん・・・ワクワクって・・・でも、そうかもね
私も、いろんな音楽家の人たちと接してきて
いつも刺激もらってる、次はどんな人が現れるんだろう?
どんな音楽を奏でるんだろうって・・・ワクワクする、たしかに!」

「お前たち・・・ワクワクするのもいいが・・・
そろそろ出かけたいんだが・・・」

「あっごめんなさい、もう出られます。美音、これありがとう、
ヒマ見つけて、チェックさせてもらう。」

「うん、頑張って!
わかんないことあったら、いつでも連絡頂戴」

「OK!じゃぁいってきます!」

「行ってくる」

ヒカルは、真一と共に急いで、出かけて行った。


「いってらっしゃ~い!・・・
はりきってるな・・・お兄ちゃん」

「そうですね・・・きっと家族の中に戻ってきて
パワーをもらったんじゃないでしょうか・・・・」

「そうだといいんだけど・・・って
沢木さん、いつからいたの?」

「わたくしは、キッチンの片づけや
リビングの拭き掃除などしておりましたが」

「まったく気配を感じなかったんだけど・・・」

「そうでございますか?おほほほほ」

そういって、キッチンに戻る沢木。

美音はキョトンとしている。







「え?再来年のR☆Sオケで振るの?」

「あぁ本当は、設立35周年の時にって話だったんだが・・・」

「35周年って?」

「今年」

「そうだっけ・・・?」

「オレはともかく、峰の奴がすっかり忘れてて
オファーもらった時には、もう別のオケでの予定が入っててな
峰が・・・・」

~~~~~

「もうこうなったら、いつなら空いてる?
今の時点で、空いてる年でいい。頼むよ千秋~~~」

~~~~~~~

「なんか想像付くな」

「記念でも何でもなくなる気がするがな」

「で、いつやるの?」

「再来年」

「再来年?だったら、40周年まで待って
盛大にやればいいのに?」

「こっちがもう予定が入っていてな・・・」

「そっか・・・」

「まぁともかく、久し振りだし、のだめも連れて行く予定だ」

「母さんも?」

「ああ、お前の作ったコンチェルトやる」

「ええっ?あれやるの?」

「もちろん、その時やらないでいつやる?」

「そりゃそうだけど・・・恥ずかしいな・・なんか」

「なんで?いい曲じゃないか・・・のだめらしさが表現されてて
それとも、今ならもっといい曲書けるのか?」

「・・・・やらせてもらえるの?」

「出来るのか?」

「わからない・・・でも、今は何でもチャレンジしてみたい!」

「・・・・そうだな・・・じゃぁやってみろ、だが、期限付きだ
1年後の俺たちの誕生日までに完成させるんだ」

「ボクたちの?・・・はい、わかりました。」

「頑張れよ」

ヒカルは、静かに頷く。






「ヒカル君、どうですか?仕事には慣れましたか?」

「母さん、はい、なんとかやってます。」

「のだめに敬語は、使わないでください」

「あっごめん、つい」

「もう真一君は、自分にも厳しいですが、人にも厳しいですから
ヒカル君に位、やさしくしてあげればいいのに」

「ボクは、構わない、その方が気合もはいるし・・・
それに、母さんには優しいでしょ」

「・・・まぁそうですけど・・・えへへ」

~~ヒカルの心の声~~

本当に、この人は、いつまでも無邪気な人だ。
これじゃ、父さんも敵わないよな・・・

~~~~~~~~

「ん?ヒカル君どうしました?」

「え?あぁなんでもない。あっそろそろ、着替えなきゃ。」

「もうですか?もっと話したいですね」

「ごめん、帰ってきてからでいい?」

「のだめ、午後にはドイツです」

「そっか・・・じゃぁ母さんが帰ってきたら
1日、必ず付き合うから。それで、勘弁して」

「ん~~わかりました。それで手を打ちましょう」

「ありがとう、あっ急がなきゃ」

ヒカルは、あわてて自室に戻るのであった。

「ふ~忙しい子ですね・・・」

のだめは、そんなヒカルの後姿を見て
寂しそうに微笑むのであった。






「よっヒカル、調子はどうだい?」

「アル、ボクの事はいいから、君はどうなんだい?」

「俺かい?すこぶるいいよ。何でだい?」

「音は正直だからね、最近、君の音がね・・・」

「・・・・・ふっヒカルには、敵わないや、実は・・・」




「そうか、でも、きっと大丈夫だよ」

「そう思うかい?」

「信じるしかないだろ?」

「そうだな・・・俺が諦めたら、終わりだもんな」

「そうだよ」

「ありがとう、君に話して、ちょっとすっきりしたよ
また話聞いてくれるかい?」

「ああボクでよければ、いつでも」

「メルシー」





「キャス、最近、何かあった?」

「あら?わかる~?さすがね、ヒカルは」

「だって、とてもいいもの、最近のキャスの音
うっとりしちゃうよ」

「やだ~私に惚れないでよ~
私には最愛のダーリンがいるんだから」

「やっぱりそうか~そうじゃないかと思ってたよ
その彼、しっかり捕まえておくんだよ
そうすれば、君の音もっとよくなるから」

「やだ~もう」





「あっリチャード、ちょっと相談乗ってくれないか?」

「何だ?」

「今、曲を作ってるんだけど・・・ここがね・・・」

「どれ?あ~そこは、こうしたらどうだ?」

「なるほど、でもそうすると
ここからの変化がつけにくくないか?」

「じゃぁこうしたらどうだ?」

「あぁさすが、そのアイデア頂いても?」

「構わないが」

「メルシー」

リチャードは、笑顔で手を上げ、歩いて行った。





「ヒカル!」

振り向くと、小さい女の子がかけてくる。

「マリー」

女の子を抱え上げる。

「キャハハ」

女の子は、大喜び

「マリーよく来たね」

後から、マリーの母親がやってくる

「ヒカルに会いたくて、急いできたのよ」

ヒカルは、女の子を下ろし

「そうなの?じゃぁマリーに、これを上げる」

ヒカルは、可愛い包み紙の飴を出して

「はい」

「ヒカル、ありがとう」

「じゃぁまたね~」

「バイバイ」






「ヒカル」

「ん?あっ、父っ千秋先生」

「お前、そんなテクどこで覚えた?」

「?テクって??」

「あっいい・・・(無意識にやってるのか?恐ろしい奴だ)」

「?」

「そうだ、ちょっとこの後
予定が入ったんだ、先に帰っていいぞ」

「はい、わかりました。じゃぁお先に失礼します」

「ん、気を付けて帰ろよ」

「先生こそ、浮気はいけませんよ」

「はぁ何でそうなる?」

「だって、この後の予定って、あの孫Ruiと会うんだろ?」

「何で知ってる?」

「母さんに聞いた」

「なんだ、のだめも知ってるのか?面倒になると嫌だから
黙ってたんだが・・・って、別にやましい訳じゃないぞ」

真一は、慌てて否定する。

「Ruiから連絡あったって、本当は母さんに会いに来たのに
まだこっちに戻ってこれないからって」

「なんだオレは、のだめの代理か」

「もしかして、ガッカリしてる?」

「なっそんなことはない
ただ久しぶりだから、懐かしいだけだ」

「ふ~ん・・・まぁいいや、じゃぁ楽しんで、チ・ア・キ先輩」

「お前、からかってるだろう?」

「あははは」

ヒカルは、逃げるように行ってしまう。

「たくっ・・・でも、あいついつの間に、あんな社交的になったんだ?
・・・・まぁ悪くない変化だな・・・・ふふ」


真一は、笑いながら、軽い足取りで廊下を歩いて行った。





そして・・・瞬く間に1年が過ぎて行った・・・・。


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