最後の?二人の時間?

新しい生活が始まる前に
二人きりにしてあげる事にしました(笑)
☆☆☆


春休みのある日

朝早い時間、小島家の呼び鈴が鳴る。


ピ~~ン~~ポ~~~ン


「はーい」


薫が、慌ただしく出ると
そこにはヒカルの姿。


「おはようございます
こんな朝早くから、スイマセン」

「おはよう、いいのよ
逆に悪いわね、こんな早くから
楓の我儘につき合わせちゃって
今着替えてるから
ちょっと待っててくれる?」

「はい」


薫は、急いで楓を呼びに行った。


「楓~ヒカル君来たわよ~早くしなさ~い!!」

「は~い、ちょっと待って~~~」


遠くから楓の声が聞こえる。


ヒカルは、微笑ましく
その光景を眺めていた。

そこへ正太郎が顔を出す。


「ヒカル君、おはよう!」

「あっ正太郎さん
おはようございます、すいません
せっかくのお休みの日に
朝から騒がしくて」

「何で、ヒカル君が謝るの?
こちらこそ、今日一日、楓ちゃん頼むね」

「はい、責任もって、お預かりします」


そこへ、楓がとびっきりのオシャレをして
出て来た。


「ひーちゃん、ごめん、お待たせ♪」


ヒカルは、ニッコリ笑って


「ううん、大丈夫。今日は一段と素敵だね♪」


サラッと、言いのけた。


「・・・・・」


楓は顔が真っ赤になる。

正太郎と薫は驚いて顔を見合わせる。

ヒカルは、キョトンとして


「?どうしたの?」


「ううん、何でもない
じゃぁ正太郎おじさん、薫ちゃん行ってくるね」

「あっうん、気を付けてね」

「楽しんできなさい」

「うん、行ってきます」

「じゃぁ、行ってきます」


ヒカルも二人に、挨拶をして
家の前に泊めた車のドアを開け
楓を助手席に乗せ、自分も運転席に乗る。

プッップッ~~

クラクションを鳴らして、出発する。

正太郎と薫は、手を振りながら見送る。



「・・・行っちゃった・・・
それにしても、この間も思ったけど
さすがフランス育ち、さらっと平気な顔で
ああいう事言うのよね~
しかも、本人自覚なしと来てる」

「そうだよね・・・うっかりボクも
一緒になってハグしあったりしちゃったけど
冷静に考えると
あれは赤面ものだよね(笑)」


薫も笑いながら


「もうあれは、勢いよ、勢い」


「なんだか、面白いね、彼は」

「基本真面目だけど、どっかズレてる?
まぁそこがいい所でも、あるんだけど」

「そうだね、あははは~」


二人は、そう言いながら家の中に入った。







TDランドに向かう車中

ヒカルは、運転の時は眼鏡をかけている。
そんなヒカルの横顔につい見とれて
ちょっと恥ずかしくなって
何も話が出来なくなった楓。


「?楓ちゃん、どうした?大丈夫?」

「うん?ううん
大丈夫・・・考えてみたら
ひーちゃんの運転する車に乗るの
初めてかもって・・」

「あれ?そうだっけ?
大丈夫、安全運転行くから」

「そこは心配してないよ(笑)」

「そう?ありがとう」

ヒカルは
オーディオのスイッチを入れる。



♪~♬~

Greeeenの曲がかかる。

♪暁の君に






「あっ私、好き」

「そう?よかった。」

「でも、なんだか意外。
ひーちゃんだったら、クラシック聴いてそう」

「まぁ実はそうなんだけど・・・
前に峰さんたち乗せた時に・・・」






~回想シーン~

「悪いな、送ってもらっちゃって」

「いいえ、大丈夫ですよ」


オーディオのボタンを押す。

ヴァイオリンの音色が流れてくる。


「何だよ、こんな時まで、クラシックかよ
運転してて眠くなんねぇの?
車の中くらい、歌入り聞こうぜ」






「って、言われちゃって・・・
今日は楓ちゃん乗せるし
自分じゃよくわかんないから
海翔さんに頼んで、セレクトしてもらった」



「あ~それで、Greeeenなんだ。
この人たちも、歯医者さんやりながら
音楽やってるんだよね?」

「すごいよね、尊敬しちゃうよ」


♪♬♪

♪歩み





「そういえば、ひーちゃんの家族の話って
あんまり聞いたことないかも・・・
ご両親って音楽家なんでしょ?」

「どうしたの?突然」

「ううん、なんとなく」

「まぁ一応、父さんが指揮者で
母さんが、ピアニストやってるけど・・・」

「妹さんもいるんだよね?」

「あぁ美音は、ピアノは弾くけど
特に音楽活動はしていないんだ。

昔から堅苦しいのが嫌いでね
小さい時にコンクールに一度出ただけで
それからはまったく。
音楽の学校もいかなかったし」

「へ~そうなんだ」

「でも、ボクが言うのもなんだけど
音楽の才能からいったら
家族イチだと思ってる」

「え?そうなの?」

「うん、小さい頃から
母さんとよく一緒にピアノを
弾いていたけれど
初見で、なんでもさらっと弾いちゃうし

ボクらが学生の時には
よく伴奏してもらって、練習してたくらいだし。
ボクも耳がいいとよく言われたけれど
美音は、レベルが違う気がする・・・
たった一回出たコンクールも
優勝した位だしね」

「それなのに、プロになってないの?」

「うん、母さんもそうだったらしいんだけど
クラシックって譜面重視って言うか
基本、勝手なアレンジは、ダメでしょ?

美音は、それが嫌いみたいで
いつも自由に気ままに弾いていたんだ」

「でも、お母さんは
プロになってるんでしょ?」

「まぁ母さんの場合は、父さんもいたし
あれでも意外と上昇志向が強くて
変な所でプライドが高いって
よく父さんが言ってた」

「へ~愛の力って感じ?」

「ふふふ、どうなんだろうね・・・
たしかに、いつも仲はよかったな」

「ケンカとかしなかったの?」

「ケンカっていうより、よく勝手に母さんが怒って
それをなだめているが父さんっていう感じ?」

「恐妻家?」

「う~~ん、恐がっているって言うより
猛獣使い?に近いって言うか・・・(笑)」

「やだ~それひどくない?
お母さん聞いたら、怒るんじゃない?」

「いや、楓ちゃんも、あの二人見たら
絶対にそう思うって!

そうだ今度、峰さんたちに聞いてみてごらん
学生時代の二人の事は
あの人たちの方が、よく知ってると思うし」

「そうか、龍さんと同じ学校だったんだよね
いつもオケが練習で使ってる学校でしょ?」

「そう」

「あははは、今度聞いてみよっと」



そんなこんなで
あっという間にTDランドに到着。






着いた途端、楓は目をキラキラさせて
ヒカルの心の準備が出来ないうちに
楓は、ジェットコースターに
ヒカルをひぱって行き
あれよあれよという間に、乗せられ


「うわ~~~~~~~」
「きゃはははは~」





「ひーちゃん、今度は、あっちの」
「え?また?」
「大丈夫、あっちは可愛いのだから・・・
最初だけ(笑)」

「これなら・・・え?うわ~~~~~」
「きゃっほ~~~」





「楽しい~~~ひーちゃん、大丈夫?」
「・・・・・」


ヘロヘロで声も出ないヒカル。


「もうしょうがないな~じゃぁ、今度は
スクリーンが動くだけだから大丈夫、行こう~」

「え?ちょっと休憩・・・待ってよ」


たしかに、コースターではないものの・・・
スクリーンに映し出された映像に合わせて
椅子がガタガタ動きだし、またもやヒカルは

「なんだ?これ~~うわっ」

「楽しい~~~~~」





ヒカルは、ベンチに座り込み、動けない。



「大丈夫?」

「・・・・大丈夫じゃない・・・・無理、もう無理」

「もうなさけない!!じゃぁちょっと休憩ね
それにしても、初めてとはいえ、ここまでひーちゃんが
苦手だって知らなかった」


「・・・・・ボクも・・・」

「え?」

「・・・・自分が、こんなに
情けないとは・・・はぁ~」

「あはははは~ひーちゃんの弱点見っけ!」

「やめてよ、でも、飛行機とか
平気なのにな・・・」

「飛行機とは違うんじゃない?
それに、私は飛行機の方が怖いけどな」

「だって、飛行機は
こんな直接風も受けないし
揺れないじゃないか」

「え~あの鉄の塊が
なんで空飛べるのかの方が、恐いよ~」

「そんなもんかな・・・あはははは」

「あはははは
じゃぁもう落ち着いた?次行こう!」

「え?もう?」

「さぁ早く!」

「・・・・は~い・・・」

ヒカルは
諦めて楓の後を追うのであった。






ランチは、ハンバーガー類で軽く済ませ
(ヒカルは、乗り物酔い状態で、飲み物で済ませた)





「しょうがない、午後は船とかイカダとか
ソフトな乗り物にしてあげる」

「・・・・はい、すいません、よろしくお願いします」






夕方になり、ようやくヒカルの調子も戻ってきた。


「ごめん、ようやく落ち着いてきたみたい」

「よかった、ごめんね
つい調子乗って、振り回しちゃって」

「ううん、ちょっとびっくりしたけど
それなりには楽しかったし」

「本当?無理しなくていいよ」

「だって、TDランドは、パリにもあるんだけど
小さい頃に行ったきりで、覚えてないし
こんなにぎやかな所だなんて
本当夢の世界だよね」

「ひーちゃんて、どんな子供時代過ごしたのよ」

「え?ボク的には、普通だと思ってるけど・・・
多分、他の人から見たら、変なのかな・・・・
まぁヴァイオリン漬けだったのは
たしかだったけどね」

「さっき聞いた、ご両親の話だと
そんなにスパルタには感じないけどな」

「?別に、親に強制されたわけじゃないよ
逆にやりなさいって
一回も言われた記憶がない位・・・」

「え?じゃぁ自主的に、ヴァイオリン漬け?」

「まぁそうなるね・・・・
っていうか、不器用なんだよ、結局」

「不器用?ひーちゃんが?」

「うん、なんでもそうだけど
複数の事を一度になかなか出来なくてね」

「?」

「まぁ小さい頃は、勉強と
ヴァイオリンで、手いっぱいで
ゲームとかスポーツとかが、へたくそでね」

「へ~そうなんだ、意外」

「学生の頃は、ちょっとヴァイオリンから
離れた時期があったから
その頃は、ピアノをやってみたり
他の国の言葉を勉強してみたり
してたけど・・・」

「・・・・それって、変」

「そう?」

「普通なら、そこで友達と遊ぶとか
恋愛してみるとかじゃないの?」

「ん~友達は、やっぱり同じ
ヴァイオリンやってるやつばっかりだし
ボクがヴァイオリン休んでる間に
ここぞとばかりにコンクールに出て
頑張ってたけど・・・・
恋愛も・・・・ん~」

「やっぱり、環境そのものが
ちがうのよね・・・国も違うし」

「でも、10代後半に入ってからは
またヴァイオリンに力入れるようになって

日本やアメリカから
友達が留学してきたりで
それなりに・・
いやかなり楽しい
学生生活だったけどね・・・・」


ヒカルは、あの頃を思い出し、懐かしむ。


「それが、龍さんの娘さんとかたーくんの妹?」

「そう、女の子たちはね。一番の友達の風雅は
それこそ、親同士が知り合いだったから
生まれた時からの友達?」

「でも、それってライバルが
友達ってことでしょ?」

「あぁそうだね、実際、同じコンクールとかで
競い合ったこともあるし」

「それって、成績とかで、気まずくならないの?」

「ん~・そればっかりは彼らに聞いてみないと・・・
多分、それなりにいろいろ感じる所は
会ったとは思うよ・・・」

「それで、ぎくしゃくしないの?」

「ん~そうなるときも、もちろんあったけど
何かあれば
お互い溜めずに、言い合ってみたり
時には喧嘩することもあったし・・・」

「ひーちゃんが喧嘩?
殴り合いとかしちゃうわけ?」

「まぁ小さい頃は
こぜりあったりすることは、あったかも
まぁ奴とは、長い付き合いだしね・・・

でも、女の子二人が来て、実際4人でいたのは
2年とか・・・3年?そんなもんだったんだよね
ボクが日本に来ちゃったのもあって・・・・」


ヒカルは、不意にうつむく。


「・・・・怪我・・・して?」


楓は、恐る恐る聞いてみる。


「うん・・・まぁね」

「何で?怪我しちゃったの?」


ヒカルは、少しの沈黙の後


「・・・・・それは・・・・ごめん、話せない
ボク一人の問題じゃないから・・・」

「・・・・そっか・・・私こそ、ごめん」

楓は、少しがっかりした。

ヒカルは、寂しそうに

「ううん、いいんだそのうち話せる時が・・・
来るかわからないけど・・・
その時が来たら、必ず話すから・・・・」

「・・・うん・・・」


(その時?その時に、
私はひーちゃんの近くにいるのかな?)


しばらく沈黙が続いていたが
辺りも暗くなりはじめ
離れた場所で花火が上がり始めた。


二人は、それぞれ複雑な心境で
次々と上がる花火を見つめていた・・・・。






☆☆☆



これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。