最後の時がやって来た・・・・。




☆☆☆


パリ

千秋家
真一の寝室


美音が真一の傍にいる。
そこへ、ヒカルが入ってくる。



「父さん、どう?」

「ん・・・・薬のせいもあるけど、うつらうつらって感じ」

「そっか・・・・ロベール先生は?」

「1件、他に往診しなきゃ、行けないところがあるから
それが終わったら、また顔出すって・・・でも、何かあったら
すぐ連絡してくれって・・・」

「・・・・楓さんと拓音君は?」

「もう昨夜の便で、こっち向かってる、あとちょっとしたら
空港に迎えに行ってくる
琴音も、ドイツからこっち向かってるし、和音はリハ終わり次第戻るって」

「・・・そっか・・・和君は、明日本番だものね・・・」

「ミキちゃんたちは?」

「来月、コンクールあるから、本当は今日一日レッスンだったんだけど・・・
多分、もうすぐ戻ると思う・・・・」

「そうか・・・」

そこへ、ヒカルに着信。

一度、部屋を出るヒカル。
しばらくして戻ってくる。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「風雅からだった・・・どうやら、日本の峰さんも、よくないらしい・・・」

「峰さんも、数か月前から寝たっきりだって言ってたものね・・・」

「うん・・・だから、これから家族で日本に行くって」

「そう・・・大丈夫だといいけど・・・」

「うん・・・」

そこに、ミキが帰って来た。

「ママ、おじいさまは?」


「うん・・・さっきからね・・・寝言なのか、なんなのか
ぶつぶつ言ってる・・・」

「夢の中で、誰かと話してるのかな?」

「ううん・・・多分、ママを探してるみたい」

「おばあさまを?」

「のだめ、のだめどこだ?って・・・」

「母さん、亡くなって15年か・・・・父さん言ってたな・・・
のだめが迎えに来た時、胸を張っていられるようにしないとって・・・」

「ママが迎えに来てくれるの待ってるのかな・・・」

「そうかもな・・・」

「そんなのいやだ!」

突然、ミキが叫ぶ。

「どうしたの?いきなり大声出して」

「だって、おばあさまが迎えに来るって事は・・・
おじい様死んじゃうって事でしょ?私は、そんなのいや!
おじいさまには、まだまだ生きていてもらいたい!!」

「ミキ・・・・」


美音は何も言えなかった。



そこへ、リンゴ~ン

パリのオーケストラに就職し、リハーサルに出かけていた和音だった。


「おじいちゃんは?大丈夫?」

「ああ、まだなんとかな」


和音も、真一の寝室に入る。

「今、寝てるから、静かにね」

「うん、わかった・・・」

和音は、そっと真一の傍に寄り添う。
すると、真一がうっすらと、目を開けた。


「あっおじいちゃん、目を開けたよ」

「パパ・・・」

「ん・・・・美音か・・・ヒカルは・・・・」

「ん?父さん、ボクはここにいるよ」

「・・・ヒカル・・・・のだめ・・・のだめ呼んで来てくれ・・」

「パパ・・・・ママは・・・」

ヒカルが美音を制して

「そうだね、母さんは演奏会から、まだ帰ってきてないんだ
もうすぐ帰ってくるから、もう少し待ってて」

周りのみんなは、涙を堪えながら、真一を見守る。

真一は、頷いて、また目を閉じる。

「父さん・・・・・?」

真一の胸は、ゆっくりだが、上下している。

「ふー・・・また寝ちゃったか・・・」

「皆ひとまず、リビングで、お茶でも飲んでおいで。
美音も、ずっと付きっきりで、疲れたろう?
ここは、俺が見てるから、子供たちと一息ついてこい」

「・・・うん、わかった、お兄ちゃん、よろしくね」








しばらくして琴音が楓と連絡を取り合い、ヒカルの迎えを待たずに
3人で、タクシーで急いでやってきた。

その後すぐ、ホームドクターのロベール先生が、やって来た。

「どうですか?シンイチの状態は?」

「さっき一度、目を覚ましたんですけど、今は眠ってます。」

「そうですか・・・じゃぁちょっと、診させてもらうよ」

「よろしくお願いします」







真一の夢の中

白髪の真一が、真っ白な空間をさまよっている・・・。


「のだめ!のだめ!どこだ?」


そこに遠くの方から、のだめが


「千秋センパーーーーイ!」


そういいながら、走ってくる。


「のだめ、そこに居たのか!」


真一も小走りに、のだめの方に走っていく。
不思議と息が切れない。


「ん?」


よく見ると、真一の姿は、あの頃に戻っていた。
目の前にいる、のだめも、出会った頃のまんまだ・・・・


「先輩、どうしたんですか~?」


のだめは、キョトンとしている。

真一は、微笑み


「のだめ、探したんだぞ、どこに行ってた?」

「何言ってるんですか~のだめは、
いつも先輩の、そばにいたじゃないですか~」

「おい!千秋!行こうぜ!」


見れば、峰龍太郎の姿も・・・


「ん?峰もいたのか?」

「何だよ、俺は邪魔者か(笑)」


笑いながら、三人はあの頃のように三人並んで歩いている。


「なんだか懐かしいな、3人で並んで歩くの・・・」

「そうだな・・・」


今度は、遠くから懐かしい声が聞こえた。


「千秋様~~~~~~お久し振りデ~ス!真澄です!」


真澄が、ものすごい勢いで、真一にしがみついてきた。


「ひぃ!」

「あはははは、真澄ちゃん、相変わらずだな」

「真澄ちゃん、すごい今日、楽しみにしてたんですよ」

「もうのだめ、余計な事言わないの!
でも、本当に、この日を待っておりました・・・
千秋様、長い間、お疲れさまでした。」

真澄は、真一から離れて、深々とお辞儀をする。

「おいおい真澄ちゃ~ん、俺にはないの?ねぎらいの言葉は?」

「ふふふ、龍ちゃんもお疲れ様」

「なんだそれだけ?随分簡単だな~(笑)」

「峰君、今まで、千秋先輩の支えになってくれてありがとうございます」

「おっおう、当たり前だ、俺はずっと千秋の大親友だからな」

「だからって、龍ちゃんまで
今日一緒にいかなくてもいいんじゃない?」

「なんだよ、俺だけ、仲間外れにするつもりかよ~」

「まぁ真澄ちゃん、いいじゃないですか?皆一緒で。
あっちで、ミルヒーも待ってますよ」

「まぁそうね、皆一緒の方が、寂しくなくていいわね」

「じゃぁ千秋先輩、峰君、行きましょう!」



4人は、仲良く腕を組み、お互い笑顔で楽しそうに
ヒカリの先へ消えって言った・・・。






ロベール先生の診察が終わり
暫くして今度は楓も一緒にヒカルと
そばについている。

ふと楓が

「?あれ?お義父さん、笑ってる」

ヒカルも気が付き

「本当だ・・・母さんと会えたのかな?」

「そうかも・・・ん?って事は?」

ヒカルと楓が顔を見合わし、ハッとする。

「父さん?ねぇ父さん」

「ヒカル君、お義父さん息してない」

「先生!ロベール先生!」


慌ててロベール先生が、確認するが
真一は、すでに息をしていなかった。

瞳孔や心拍なども確認するが
首を横に振り、医療器具を外し
真一から離れる。

「父さん!」
「パパ!」
「おじい様」

その場にいた者は、皆泣き崩れた。


しかし、真一の顔は、とても幸せそうで、
今にも声を出して笑いだしそうな笑顔だった・・・。














千秋真一様

父さん・・・・よかったね・・・ようやく母さんに会えたんだね・・・。
長い間、本当にお疲れさまでした・・・
そして今まで、本当にありがとう・・・・。

千秋真一と野田恵の子供に生まれてボクと美音は
本当に幸せでした・・・・・心から感謝いたします。

これからはボクたちの事は心配せず
母さんと一緒にゆっくり休んでください・・・。


ーーーーー千秋 光 斉藤 美音 家族一同





Fin




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