久し振りに、ジャン・ドナデュウが
R☆Sオーケストラの公演の指揮を
やることになったのだが・・・。


☆☆☆


桃ケ丘音大R☆Sリハーサル室

峰とヒカルが、何か話をしている。



「なんだって、あんなやつに
オファーなんて、出したんだよ」

「何言ってるんですか
オファー出したの峰さんじゃないですか」

「俺は、あの時は
何も知らなかったんだ」

「じゃぁ
しょうがないじゃないですか」

「ヒカル!!お前は
あの頃から知ってたんだろ???」


峰は、思わずヒカルの
胸ぐらをつかむ。


「ちょいちょい、峰さん
何やってるんですか」


ちょうど、練習に参加しに来ていた
拓海と海翔が
通りがかり仲裁に入った。


「あっ拓海さんに海翔さん、」


ヒカルは、ホッとする。


「何がどうしたんですか?」


拓海が、峰に問う。


「どうしたもこうしたもあるか!!」


峰は、そう言い捨てて
その場から離れた。


「どうしたの?」


今度は海翔が
ヒカルに問うた。


「いや~まぁ・・・・」


ヒカルは
どう説明していいのか悩んだ・・・。









1か月前

峰家のリビング


前日に清良が
ヨーロッパツアーから帰国していた。

昼過ぎ、清良がくつろいでいる
龍太郎のそばにやってくる。


「龍、おはよう」

「おう、おはよう、よく眠れたか?」

「うん・・・龍
ちょっと話があるんだけど」


清良は、龍太郎の前に座る。


「何だよ、改まって」

「いや・・・・怒らないで聞いてよ」

「何だよ、なんかヤバい話か?」

「まぁ龍的には・・・・ヤバいかも・・・」

「何だよ、早く言え」

「今年のR☆Sの指揮、
ジャンなのよね?」

「指揮?あぁそうだけど・・・
あいつ、まさか来れなくなったとか?」

「いや、そうじゃないんだけど・・・・」

「何だよ、じれったいな」

「その公演の後に・・・・
日本で結婚式することになったの」

「結婚式?誰の?」


清良は目を反らしながら言う。


「え~っと、風雅君の?」


「?風雅って、ジャンの息子の?」

「うん」

「へぇ~めでたいじゃん
それが何で、俺的にヤバい訳?」

「・・・・相手がね・・・」

「相手?あぁ嫁さんか・・・
なんだ、俺の知ってる子か?」

「知ってるも何も・・・・」

「何だよ、だから
もったいぶらずに言えよ」

龍太郎は
何も知らずニヤニヤしている。


「・・・・聖良・・・」

「ん?聖良?そっか
あいつか~って、おい!」


龍太郎の顔が一変する。


「だから、怒んないでって
言ったじゃない」

「ちょっと待て、何で
ジャンの息子と聖良が???結婚?
そもそもあいつら
付き合ってたのか?」

「あら?龍ったら
知らなかったの?
もう、5年位に
なるんじゃないかしら?」


清良は、すっとぼける。


「何だと???5年?
でも、5年前っていったら
聖良はもうウィーンに
言ってた頃じゃないか」


「風雅君が、聖良を追っかけて
いったらしいわよ~
詳しくは知らないけど」


清良は、さらにすっとぼける。


「はぁ??でも、聖良は
あっちのプロオケで、頑張ってるんだろう?」

「まぁね」


清良は、あっけらかんという。


「まぁねじゃねぇだろ?」





「え?じゃぁ、その風雅って奴が
コンクールで
優勝してプロの指揮者になるから
結婚するって言うのか?」

「まぁそうね
二人でそういう約束になってたみたい」

「聖良だって
せっかく入ったプロオケ続けるんだろう?
どうするんだよ?」

「・・・・遠距離結婚?」

「冗談じゃね!」


龍太郎の怒りは頂点に達する。

「もう落ち着いてよ
それだから言いたくなかったのよ」

「これが、落ち着いていられっかっての
聖良はどうした?
あいつに直接、話し聞いてやる」

「ちょっと待ってよ
何のために私が
話をしてると思ってるの」

「俺に反対されるって
わかってるからだろ!
だからって
そんな大事なこと・・・・
なんで・・・」


今度は
うなだれ涙声になる龍太郎。


「龍・・・・」


しばらく沈黙が続く。

そこに、聖良が現れる。
奥の部屋で二人の話を
聞いてたのだ。


「パパ・・・・ごめんなさい・・・」


聖良は、泣きそうな顔で
龍太郎に頭を下げる。


「聖良・・・・」


清良は心配そうに
二人を交互に見つめる。

龍太郎は、しばらく無言で
下を向いている。

聖良は、たまらず


「でも、私!・・」

「それでも、大丈夫なのか?」


突然、龍太郎が、話し始める。


「え?」


聖良はビックリして聞き返す。


「プロになったからって
すぐ食えるようになるわけじゃ
ないんだろう??
お前だって、片手間で出来るほど
甘くないんだぞ
プロのオーケストラってのは!!」

「・・・・そんなのパパに言われなくても
わかってるわよ!!
でも、私決めたの!離れてても
二人なら大丈夫って・・・

だって
パパたちもそうだったんでしょう?」

「はぁ?」

「だってママに聞いたよ
二人が付き合ってる時
ママが師匠について
しばらく日本に帰れなくなるってなった時に、
パパ言ったんでしょう?

一人で不安なら、結婚して
峰清良になって、行ってこい!って」


龍太郎は、黙って聞いている。


「だから、私・・・
ウィーンで一生懸命頑張った、
それこそ毎日毎日、朝から晩まで・・・・

でも、やっぱり一人で辛くて、辛くて・・・
そんな時ね、風雅がウィーンまで
会いに来てくれたの・・・

正直、うれしかった、そうしたら
また頑張ってみようって・・・・
それからもパリとウィーンで
それぞれの夢を叶えるために
頑張ってきた・・・。

で、ようやくわかったの、やっぱり私には
風雅が必要だって・」

「聖良・・・・」


龍太郎は、昔の事を思い出し
愛おしい目で聖良を見つめる。



「やっぱり、ヒカル君たちの
影響かしらね」

「え?」

「あたしも、正直最初は
続かないんじゃないかと思ってたの・・・
聖良は、気は強いけど、
ちょっと甘ったれな所あったから・・・」


「ママ、ひどっ」

聖良はムクれる。


「でも、あれだけの才能がある子たちが
そばにいて、
聖良にもいい影響が出たみたい」



聖良は、昔を思い出しながら
穏やかな表情になる。


「そうかも・・・あの3人のおかげで
色々感じることが出来たし
短かったけど
充実した2年間だったな・・・・」

「そうでしょう・・・
パリやウィーンでの経験は
決して無駄にはならないわ」

「うん、そうあってほしい」

「うんうん・・・あっ!!」


龍太郎は、突然、奇声を発する。


「何よ、龍、ビックリするでしょ」

「なんかいい話風に
まとめようとしてるけど
話しがそれてるぞ」

「はい?」

「だから、聖良
結婚なんて、俺は許さん!!

しかも、あのジャンの息子?
冗談じゃない!フランス男なんて
絶対許すもんか!!!」


龍太郎は、言いたい事だけ言って
部屋を飛び出して行ってしまった。


「はぁ~やっぱりこうなるのね・・・」

「パパのバカ・・・・」


二人は、肩を落とし
うなだれるしかなかった・・・。







R☆Sオケのリハ終了後


ヒカルと拓海たちは
ファミレスで一息ついていた。


「・・・というわけなんです・・・はい」


「なるほどね・・・峰さんも
普通の父親だったって事だ」

「なんか、意外だな」


二人は、笑う。


「笑い事じゃないですよ」


「でも、もう公演は決まってるんだし
今更変更は出来ないだろ」

「そうなんですよ
それは峰さんもわかってるとは
思うんですけど・・・」

「それに、公演の後に結婚式って
それも急だな」

「あっそれは
峰さんにとってだけです」

「へ?」

「パリの方では、随分前から
そういう方向で話が
まとまってて・・・」

「父親だけ、蚊帳の外?」

「まぁ、ああなるのは
予想できたんで・・・」

「パリの方ではって事は・・・
友達とかも来るの?」

「あっはい、友達は
そうたくさん呼べないですけど、家族とか
近しい音楽関係者とか・・・」


「あっそれでか!」


「なんだよ、拓海、突然」


「いや、何日か前に
舞から別件なんだけど
連絡があって、切り際に、近いうち
日本に行くからって」

「理由は聞かなかったの?」

「急いでたみたいで
用件だけ言って
最後に思い出したみたいに
言って切れた」

「それから連絡は?」

「かけても、いつも留守電
忙しいんだろ?」

「多分、そうでしょう
日本に来るために
それまでのスケジュールは
ビッシリだって言ってたから」


拓海は、ちょっとムッとして


「なんだ、お前の所には
連絡いってるのか?」


ヒカルは、あわてて


「いや、僕も最後話したの
2週間くらい前ですから」


海翔が、笑いながら


「まぁまぁ、うざい兄貴より
彼氏の方が・・」


「彼氏じゃない」
「彼氏じゃありません」


二人して、否定する。

拓海は、ふてくされ
ヒカルは、照れて赤くなっている。

海翔は、大笑い。







☆☆☆


風雅がウィーンに行ってから
5年後くらいの設定です。

聖良は、ウィーンの学校卒業後
そのまま、ウィーンのプロオケのオーディションに合格。

第1ヴァイオリン奏者の一人として、
日々頑張っている。

風雅はヨーロッパ修行の後、
意気揚々とコンクール出たんですが
結局、1位なしの2位で撃沈。

だけど、風雅の気持ちは変わらず
その後プロポーズ・・・。

そして、半年前のコンクールで、
ようやく優勝し、晴れて結婚することに・・・。

(とはいえ、就職が決まっている訳では
ないのですが)



そして、相変わらずの峰と清良。

果たして、無事に
R☆Sオケの公演は、開催されるのか?
風雅と聖良の結婚式ができるのか?

それは、また次の機会に・・・・。


※このお話は、結構前に出来ていたのですが
初めは、ウィーンに留学していた聖良が
3年後にヴァイオリンを諦め、
日本に帰って来たって
いう設定だったのですが
それじゃ、なんかね~と、何回も設定を変え
ようやく、この設定に落ち着きました。


年齢的には、25歳ころのお話という事で。

ちなみに峰君と清良さんは、55歳位ですかね~

あっ拓海と海翔は、もうりっぱに歯科医になっておりますが
未だにR☆Sオケの公演は、出来る限り参加してる設定です。

ヒカルは、R☆Sオケの30周年の公演も無事終え
(交響曲「ライジングスター」完成済み)
翌年には、両親の為に「ピアノ協奏曲」も作曲、
大きな話題になり、この頃には、音楽監督などを
兼任しながら、若手作曲家として歩み始めた頃・・・・かな?