神様、いるなら
なぜこんなひどいことするの?

神様、お願いだから・・・・・・。




昨夜は、なんとか家に帰った
真一とのだめだったが

翌日、一番で、また病院に来た。


ヒカルは、すでに普通の病室に
移されていて、目も覚めていた。




「・・・父さん、母さん・・」


「おはよう、ヒカル君、気分はどうですか」

「思ったより、顔色はいいな」



真一とのだめは、極力普通に振舞った。



「・・・・風雅たちは?」


「大丈夫ですよ
3人ともケガもなく無事ですよ」


「そう、よかった・・・」


「手、痛むか?」


「ん・・・・そんなには・・・
まだ麻酔が利いてるのかな・・・
なんか自分の手じゃないみたい・・・・」


真一とのだめは、ちらっと目を合わせ
昨夜の先生の言葉を思い出した。



(手術は、上手くいきました・・・
行きましたが、完全に元に戻るか
どうかというのは
また別の話で・・・・
繋げた神経や他の組織が
うまく機能するかは、
今後の経過しだいなんです・・・
目安は、痛みです、麻酔が切れた後、
痛みが出るかどうかですね・・・)



のだめは、涙が出そうになるのを堪え



「のだめ、何か飲み物買ってきますね。」



と病室を出て行った。



「なんだ、慌ただしい奴だな・・・」



「父さん・・・・」


「ん?」


「僕の左手、治るの?」


「え?」



一瞬、ドキッとする真一。



「だって・・・母さんの
様子見てたら、わかるよ・・・・」



「・・・・・そうだな
隠してもしょうがないな・・・
でも正直、まだわからないんだ・・・
お前の左の手っていうか
指だな・・・」



「指・・・・」



「小指、薬指、中指なんだが・・・
神経が切れていて
手術で繋げてもらったんだが・・・」




「神経が・・・・」




真一は昨夜、医師から聞いた事を
包み隠さず話した。




小指は、傷が骨まで達していて
骨折状態である事
他の指も、今後リハビリ次第で
徐々に感覚は戻るであろうが
以前のように、完全に戻るのは
難しいだろうという事・・・・



黙って、真一の話を聞いているヒカル。



のだめは、病室に入れず、部屋の外で
真一の話を涙を流しながら聞いていた。




「ヒカル、はっきり言うぞ・・・・
たしかに、
諦めるのは、まだ早いと思う・・・


でも、今の状態では
ヒカルが、これからやろうとしている事を
今まで通りに、やるのは厳しいと思う・・・・
覚悟はした方が、いいかもしれない」



「・・・・・・」



ヒカルは、黙っている。



そこへ



「真一君、そこまで言わなくても
いいじゃないですか」



真っ赤な目をした
のだめが飛び込んできた。



「のだめ・・・」




「母さん・・・・」




「いつもいつも、真一君の言う事は
正論ですよ、正しいですよ
でも、もっとヒカル君の気持ちを
考えてあげてください」



「・・・・・・」



何も、言い返せない真一。




「母さん、良いんだよ・・・・
はっきり言ってもらった方が・・・・
それに、父さんも言ってたじゃないか
諦めるのは早いって・・・
ボク、諦めないよ、リハビリ頑張って
絶対、ヴァイオリンまた弾くよ
ね、父さん、そうだろ?」



目に一杯涙を溜め
真一を見つめるヒカル。



「・・・・そうだな
今、決めることじゃないな
すまん、ヒカル
父さんも、正直、怖かったんだ
あんなに頑張ってるお前が・・・」


真一は、耐え切れず
声を詰まらせた。



「真一君・・・・・」



のだめも、そんな真一の姿を見て
真一の肩を抱き寄せる。



「ヒカル君、今は怪我を
治すことに専念しましょう。」



「うん・・・・」



涙を拭いながら
ヒカルはうなずいた。



「父さん、母さん
この事、皆には?」



「いや、昨日の今日だから
母さん(征子ママ)にしか、話してない」



「じゃぁ、風雅たちには
黙ってて。
もちろん、他の人にも」



「うん、わかった・・・」













手以外の怪我がないヒカルは
2日後には退院して
1週間後には、抜糸も済ませ
さっそくリハビリを始めた。



世の中は
もう新しい年に変わっていた。








☆☆☆


怪我に関しては
実体験からの描写です。

実際、指先の間隔は
完全に戻ってません。

でも、別に普通に
日常生活を送るには
何の不便もありません。

しかし、やっぱり指先を
使って演奏する楽器を
扱う人にとっては
感覚がなくなるってのは
死活問題なのかなと
思いまして・・・・。

まぁ妄想世界なんで
野暮な突っ込みは
お許しを・・・・。






☆☆☆



「ミセナイナミダハ、きっといつか」
ByGReeeeN